「オホーツクの食と農」プロジェクトについて
平成16年度の成果と今後の課題
今回の学習活動を通じて明らかになったこと、それは同じ地域に住んでいながら、地域のことはまるで解っていないこと、そして人間として一番大切な食について余りにも無頓着すぎることであった。しかしながら、異業種の人々が一つのテーブルについて議論し、何かを探し始めたとき、無限の可能性が広がっていった。そうした学習の成果を単なる学習会の中で終わるのではなく、デジタルコンテンツ化して広げていくことは、情報の蓄積によるさらなる課題の発展へとつながる。単に地域の取り組みだけで終わるのではなく、他地域との情報連携への発展を促すことができる。このプロジェクトの経過については、(社)農産漁業文化協会が発行する「食農教育」へ寄稿していることから、今後、他の農業関係団体や総合的な学習を支援する学習グループとの情報交換が期待される。 女満別では生産者と消費者・教職員が一つになって、女満別の農業、北海道の農業、日本の農業を真剣に考えようとしている。我々には、生産者の熱い想いを地域の子ども達にしっかりと伝えていく責任があり、単なる利益追求ではなく、子ども達の未来の幸せのためにこのプロジェクトを進めていかなければならない。 地域に根ざした「食と農」というテーマを追求するのが最大の目的ではあるが、個々の農家や一般消費者の意見が聞こえにくくなっている今日にあって、農家や消費者がお互いに食と農について考え、意見を交わし、理解しあうということは、実に有意義なことである。お互いの理解の中から、最善の方法を共同で考えていくことが出来るよう願いたい。 今後は、脳科学との関連性、社会現象となっている青少年の凶悪犯罪の多発、母親の身体が胎児に及ぼす影響や食の粗悪化など、子ども達を守らなければならない責任のある大人として、こうしたテーマについても、学習を進め、その成果をデジタルコンテンツ化していきたい。 様々な背景を持つ人々が集まった学習会を契機として、それぞれの参加者にとって新たな発見が生まれている。今後は、学習会開催を基本とし、そこから生まれる新たな議論によって、さらに学習の蓄積と発展を進めていくような継続性が重要である。この学習会が一時的な情報交換となるのではなく、真に地域のことを考える学習集団となるためには、学習者個々の協力と、学習集団としてのコミュニケーションの活性化がポイントである。インターネットの活用は、デジタルコンテンツの蓄積と、個々の学習者のモチベーションをさらに向上させるのに役立つはずである。
平成17年度の成果と今後の課題
平成17年度の学習活動をふり返ってみると、「食と農」というテーマの学習内容は多岐にわたり、特に地域に関わる情報をどのように整理していくのかが課題となった。学習データを公開していくためには、協議会メンバーによる整理が必要となる。学習会の成果をコンテンツとして公開する前に蓄積したり、整理したりする一つの手段がSNSなどのコミュニケーションツールである。時間と場所に制約されない新しい学習スタイルを模索し、地域の情報交換を進めていくためには、このようなコミュニケーションツールが有効である。 また、コンテンツの公開に際しては、コンテンツマネージメントシステム(CMS)を導入することによって、簡単にページの更新が可能である。「食と農」のプロジェクトを続けていくためには、絶えずコンテンツの更新が必要であることから、各自がホームページ作成を行うのではなく、情報を整形して公開できる方法とした。 それぞれの学習会は、参加者が「食と農」に関する理解を深めるよい機会となっているが、学習の成果をデジタル化して公開することにより、学習会参加者以外にも「食の大切さ」や「農業への理解」を広めていくことができる。 平成17年度は、女満別小学校の総合的な学習の時間においてまとめられた各児童のレポートも貴重なデータとなった。 今後は、デジタルコミュニケーションツールによりメンバー間の交流を活発にし、新たなデジタルコンテンツが絶えることなく生成されるようになれば、さらに「食と農」に関する学習を広げていくことができるだろう。 同じ地域に住みながら、作物の違いによって生産者同士でもお互いのことをよく知らないなど、昨年は「お互いに知る」ことから学習を始めた。お互いを理解する段階から一歩先へ進め、学習成果をいかに学習者以外に伝えていくかが今後の課題である。 平成18年3月31日に、女満別町は東藻琴村と合併し「大空町(おおぞらちょう)」になったことから、このプロジェクトの取組もさらに地域を広げたものにしていきたい。
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