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「オホーツク食と農」
実践活動の評価・分析
連携促進委員から
1.実践テーマの遂行
3年間の実践の展開に関しては、厳密なシナリオがあった訳ではない。むしろ、実践協議会メンバーの意見交換の中から学習の方向性を修正していくという展開であったため、最終的には総合的な学習への支援が中心となった。結果的には、学習成果を地域・学校等へ普及させるという到達目標に達することができた。
2.実践活動の推進
本実践協議会は、学習者の自主的な活動の場でもあった。3年次の活動は、学習成果の実践の場となった。 1年次は、2つの学習グループが稲作と畑作という違いにより、農業者同士でもお互いに知らないことがあることを確認し、消費者へのアピールが必要であるということを痛感している。2年次では町民参加型学習会の開催や都市との交流によって、体験型学習を発展させる下地を作り、3年次にしっかりと学校と連携する体制が整っている。実践協議会を組織したことによって、メンバー同士が自発的に学校への支援を拡大していった点は、評価に値する。事業終了後、総合的な学習支援を継続していくために必要な予算も大空町で確保された。実践協議会メンバーによって、引き続き学校への支援が続けられる体制が用意された。 実践協議会担当者が主導的になるのではなく、参加者の意向に合わせて学習を進めるようにしたことから、協議会メンバーが自発的に地域の学校への支援を果たした。学校と実践協議会メンバーを結びつけるために、教育委員会・生涯学習課が果たした役割も大きい。圃場提供先、協議会メンバーと学校の連絡調整などは、社会教育行政がこれまで培ってきたノウハウや人的資産を有効に活かすことができたからこそ、計画的に進めることができたと言える。生産者、消費者、教員等が参加し、意見交換を重ねることによってお互いの信頼関係を築いたうえで、共通の実践協議会メンバーとして活動する下地を作った。
3.連携促進委員として
平成19年1月の中央教育審議会「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」(中間報告)では、国民の学習活動を促進するために必要な5つの視点として ア.国民全体の人間力の向上、 イ.「公共」の視点の重視、 ウ.人の成長段階に即した多様な選択肢を提供する政策の重点化、 エ.実社会のニーズを生かした多様な学習機会の提供、 オ.情報通信技術の一層の活用 があげられている。「食育」という人間力を高めるためのテーマに対し、学習者自らが「公共」の視点で地域の課題に取り組み、他地域や異業種・異世代との交流を交えた学習機会を創出し、学習成果を地域に還元していったという点で、この事業の成果を感じることができる。情報通信技術の一層の活用は、事業を展開していくきっかけの一つにすぎなかった。 同報告では、地域の教育力向上に必要な視点として、ア.家庭や地域の教育力と学校教育の効果的な連携「つながり合い」(共育)、イ.地域の課題解決は地域自身の手で「助け合い」(共生)、ウ.家庭や地域の教育力と学校教育の効果的な連携「つながり合い」(共育)の3つをあげている。さらに、学習活動を支援していくために「学校教育との連携協力及び家庭教育への支援が社会教育行政の責任の一つであることを明確にする」点と、「地域社会全体の学習活動を行政として支援する仕組づくりにおいて、関係者の連携を促しつつ、総合的な企画・立案、運営等を行う社会教育主事の存在が極めて重要である」という点にも言及している。 本協議会においては、まず、「地域の農業」という学習素材を取り上げたことがよかった。学習グループが地域について学び、子どもたちに伝えようという取り組みへと広がった。地域の課題解決を地域自身の手で行おうという体制を作ったうえで、学校教育へとつなげていくことができた。こうした活動が展開できたのは、異業種による実践協議会という組織の立ち上げが効果的であったと考える。それを支援しなければならないのは、やはり社会教育行政であるという原点も改めて実感できた。 他の地域でこうした取り組みを行おうという場合、家庭・地域・学校を結びつける際に、様々な壁があることも事実であろう。それぞれの地域には優れた地域の人材がいて、地域の課題に積極的に取り組みたいと願っている。本協議会の実践によって、どのようにしたら学校教育との連携がスムーズに図れるのかというモデルを提示できた。生涯学習課の秋葉氏がコーディネーター役となっている点も重要である。 一方、連携促進委員として学習素材のデジタル化を支援する点では苦戦した。いずれの年も農繁期を避け、冬期間に学習会を開催したことにより学習が断続的になってしまった。3年間を振り返って、地域の様々な素材をもっとたくさんデジタル化しておけばよかったと思う反面、3年という時間をかけて学校と生産者を結びつけた取り組みそのものが、デジタルコンテンツとしてPRしていくにふさわしいものだと感じる次第である。本事業は最初からホームページで成果を発信していく使命を負っていたことが幸いであった。本実践協議会の活動はこれで終わりではなく、これからも情報発信を続けていくことが重要である。
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